Classiques japonais avec furigana
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すだま
木魂
夢野 久作
Lisez 木魂 (すだま) de 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 23 668 caractères · 46 écrans
重々悪かった。堪忍……堪忍してくれ……おおっ。太郎……太郎太郎。お父さんが……お父さんが悪かった。モウ……もう決して、お父さんは線路を通りません……通りません。……カ……堪忍して……堪忍して下さアアア――イ……」
と声の涸れるほど繰返し繰返し叫び続けたことか……。
彼は依然として枯木林の間の霜の線路を渡りつづけながら、その時の自分の姿をマザマザと眼の前に凝視した。その瞼の内側が自ずと熱くなって、何ともいえない息苦しい塊まりが、咽喉の奥から、鼻の穴の奥の方へギクギクとコミ上げて来るのを自覚しながら……。
「……アッハッハ……」
と不意に足の下で笑う声がしたので、彼は飛び上らむばかりに驚いた。思わず二三歩走り出しながらギックリと立ち佇まって、汗ばんだ額を撫で上げつつ線路の前後を大急ぎで見まわしたが、勿論、そこいらに人間が寝ている筈は無かった。薄霜を帯びた枕木と濡れたレールの連続が、やはり白い霜を冠った礫の大群の上に重なり合っているばかりであった。
彼の左右には相も変らぬ枯木林が、奥もわからぬ程立ち並んで、黄色く光る曇り日の下に灰色の梢を煙らせていた。そうしてその間をモウすこし行くと、見晴らしのいい高い線路に出る白い標識柱の前にピッタリと立佇まっている彼自身を発見したのであった。