Classiques japonais avec furigana
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とうおういぶん
東奥異聞
佐々木 喜善
Lisez 東奥異聞 (とうおういぶん) de 佐々木 喜善 (ささききよし) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 63 862 caractères · 124 écrans
ところがその年の秋の出水に、あたりの川々が氾濫して川口の町の大橋が毀れ落ちてしまいました。その橋普請の材料にこの曲がりトチが伐り出されるようにと、時の役人からのお布令が村にお達しになりました。それからはいくら村の守護神木だといってもお上からの仰せには背くわけにはいかず、日夜木を伐りにかかったが、あまりな巨木でどうしても伐り倒すことができません。だから昼間は村人がかわりがわりに斧で伐り、夜は夜で夜もすがら根下を焼いて、ようやく三七二十一日めで伐り倒しました。
ここにふしぎなことにはそのトチの木を伐り出すころから大屋の娘が、あの木を伐ってはならぬ、あの木を伐ってはならぬと口走って、悩み悶えておりましたが、巨木が伐り倒されたじぶんにはとうとう気が違ってしまって、毎日毎日ただ泣いてばかりおりました。
その巨木はそれから山川の水の勢いでだんだんと押し流されて下流に下りました。そして金沢村と大槌町の境のあたり壺桐ヶ淵という所までくると、どんと深淵の中に沈んだまま、どんなことをしても二度と浮かび上がりませんでした。
大屋の娘は村人とともに、木の流れるのを見送って泣きながら、そこまでついてきましたが、そのありさまを見ると、やにわに深淵のなかに飛びこんでいって、その巨木に抱きついたまま離れませんでした。