Classiques japonais avec furigana
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まつかぜのもん
松風の門
山本 周五郎
Lisez 松風の門 (まつかぜのもん) de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 12 862 caractères · 26 écrans
八郎兵衛はまだそれを考えていた、大滝の飛沫は霧のように渦巻き、日光の縞が、深山竜胆の紫を美しく透している、そして朝な朝な、谿谷の冷えた空気がしみいるように匂う、とつぜん吹きあげる風に、枝葉から雨のようにこぼれ落ちる滴、その気忙しい音までがはっきり耳に甦えってくるようだった。
村道まで十間の距離に近づいた。押し合いへし合いしている人々の殺気に充ちた顔が、大きく瞠いた眼が、八郎兵衛一人の上へ集っていた。そして彼がなおも、黙って大股に間隔を縮めて来るのを見ると、その群の中から浪人態の恐しく巨きな男がとび出して来て立ち塞がった。
「止れ、何用で来た」
浪人は三尺に余る野太刀の柄に手をかけて叫んだ。八郎兵衛は近寄りながら、
「一揆の軍師と称しているのは其方か」
「そんなことに答える舌は持たん、検地を取止める使者なら許すが、その他の用で来たのなら此処から帰れ、我われは暴政を拒けるか、伊達の家を宇和島から逐うか、孰れか一途を貫徹せぬ限り手はひかんのだ」
「其処を退け、退かぬか」
言葉と共に八郎兵衛の腰から大剣が「の」の字をえがいて飛んだ。あっ、という声が一揆の人々の口を衝いて出た。