Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

もみノきはのこった

樅ノ木は残った

山本 周五郎

Lisez 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 145 078 caractères · 285 écrans

Aozora Bunko

「ふじこ、こっちを向け」と七十郎が云った。

ふじこは「なんですか」と七十郎のほうへ向き直った。七十郎は酔って充血した眼を細め、珍らしいものでも眺めるように、ふじこの顔を見まもりながら、ほう、といった。

「おまえふじこだな」

「ふじこはわたしですよ」

「初めからふじこか」

「初めからって、どの初めからですか」

「おれが来たときからさ」と七十郎は口の端を手の甲でぬぐった、「おれがここへ来た初めから、ふじこが相手をしてくれたのか、と訊いているんだ」

ばからしい、とふじこは鼻柱へ皺をよせ、お客さんは酔って気がどうかしているのだろう、という意味のことを、ひどい訛りのある言葉でつけつけと云った。

「おれが酔っているって」と七十郎は笑った。

「このくらいの酒でおれは酔やあしない、そんな心配をするな、いまふじこの顔に気がついたので、びっくりしたところだ」

「わたしの顔がどうかしていますか」

「やまが育ちにしてはきれいだ、あんまりきれいなんで、今日が初めてかと思ったんだ」

「ばからしいこと」

「おまえ山そだちだろう」

「お客さんはどうですか」

「ばからしい」と七十郎が笑った。

酌をさせて一つ飲み、またふじこの顔を眺めながら、うん、と頷いた。