Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

もみノきはのこった

樅ノ木は残った

山本 周五郎

Lisez 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 145 078 caractères · 285 écrans

Aozora Bunko

取次の侍は式台にいたが、すっと膝を進めて甲斐を見あげ、声をひそめて云った。

「申してもむだでございます」

「どうしてだ」

「ここは御隠居の殿のお屋敷ですから、御本邸の国老という職権だけではとおりません、押しておとおりになれば」と云ってその待はさらに声をひそめた、「御一命にもかかわりかねないと存じます」

甲斐はその侍の顔をみつめた。

――どこかで見た覚えがある。

年は三十一か二であろう。まる顔のがっちりした躯つきであるが、見あげている眼には、なにやら哀訴するような色がうかがわれた。

「そのほうはなんという」

「小姓組の千谷新十郎と申します」その侍はそこで低頭し、すぐに顔をあげて云った、「お願いでございます、どうぞここはお引取り下さい、たって伺候のお望みでしたら御後見からお指図のあるよう、おはからいのうえに願います」

甲斐は新十郎の眼をみつめていた。

「御記憶でございますか」と新十郎は甲斐を見あげながら云った、「かつてこなたさまが望岳亭へ伺候された帰途、藪囲いのところで闇討ちを仕掛けた者でございます」

「覚えがない」と甲斐は云った。

「詳しいことを申上げるいとまがございません、私はあのときのお言葉を肝に銘じております、いまここでは私の申すことをお信じ下さい、私の友人が奥で血気の者どもを抑えているのです、お願い申します、どうか