Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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もみノきはのこった

樅ノ木は残った

山本 周五郎

Lisez 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 148 519 caractères · 296 écrans

Aozora Bunko

それは、巳之助丸の生母が、櫛笥左中将隆致の女だったからである。彼女は貝姫といい、その姉の逢春門院は後西天皇の御生母であった。こういう名門の出である母から生れたので、正夫人は彼を世継に推したらしい。そして、彼は二人の兄をさし越して、忠宗の世子に直った。

三男は田村家を継いで、いま右京亮宗良となのり、栗原郡岩ヶ崎、一万五千石の館主である。五男も分家して、式部宗倫といい登米郡寺池、一万二千石の館主であった。

「すると、つまるところ」と六郎兵衛が云った、「上に二人の兄があるのに、末子が跡目を継いだ、それが不当だということか」

「ひと口に申せばそうです」と新八が云った、「兄も正しくそうだと云っていました」

「それは兵部の説だな」

「兄はそうだと云いました」

「あとを聞こう」と六郎兵衛が云った。

「私もそうかと思っていたのですが、殿さまが御逼塞になった日、兄は、はかられた、と申しておりました」

「はかられたって」

「そうです、ひどく苛いらしたおちつかないようすで、はかられた、はかられたと申し、どうしたらいいか、などと、苦しそうに独り言を云っていました」

「その明くる晩、刺客が来たのか」