Classiques japonais avec furigana
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はるはばしゃにのって
機械・春は馬車に乗って
横光 利一
Lisez 機械・春は馬車に乗って (はるはばしゃにのって) de 横光 利一 (よこみつりいち) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 77 492 caractères · 156 écrans
梶がヨーロッパへ旅立つ前からうっかり民族という言葉を用いようものなら、ひどく知識階級のある種のものたちから矢を受けた。けれども、この明瞭(めいりょう)な現実の根柢(こんてい)であるところの種族を黙殺して、何の知性が種族の知性となるのであろうか。梶はこう思う。
「自分がこのように棲息(せいそく)している種族の知性を論理の国際性より重んじるところは、自分が種族の国際性を愛するからだ」と。
全く今まで梶の一番混乱を起した抽象的な場所はここであった。またこれは梶一個人の混乱の場所だけではなく、日本の知識階級全部の混乱の源をなしている奇奇怪怪の場所でもあった。一度(ひとた)び問題がここに触れようものなら知識階級は総立ちになって喧騒(けんそう)を極(きわ)めるのだ。今やまた梶が帰ってみればヒューマニズムの論議が沸き立ち上っている最中であったが、これも仔細(しさい)に眺めていると、種族の知性と論理の国際性との分別し難い暗黒面から立ち昇っている濛濛(もうもう)とした煙であった。
すべての知識階級の者たちは、頭の中にそれぞれこの暗い穴を開けられたまま歩いていた。歩く彼らの足つきや方角を見ていると、誰も彼も勝手の悪そうな顔をして煙っている他人の火元を見合いながら慰め合うのである。