Classiques japonais avec furigana
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はるはばしゃにのって
機械・春は馬車に乗って
横光 利一
Lisez 機械・春は馬車に乗って (はるはばしゃにのって) de 横光 利一 (よこみつりいち) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 77 492 caractères · 156 écrans
彼は惨酷に臓物を奪い上げると、直ぐ鍋(なべ)の中へ投げ込んで了うのが常であった。
妻は檻(おり)のような寝台の格子(こうし )の中から、微笑しながら絶えず湧(わ)き立つ鍋の中を眺めていた。
「お前をここから見ていると、実に不思議な獣(けもの)だね」と彼は云った。
「まア、獣だって、あたし、これでも奥さんよ」
「うむ、臓物を食べたがっている檻の中の奥さんだ。お前は、いつの場合に於ても、どこか、ほのかに惨忍性を湛(たた)えている」
「それはあなたよ。あなたは理智的で、惨忍性をもっていて、いつでも私の傍から離れたがろうとばかり考えていらしって」
「それは、檻の中の理論である」
彼は彼の額に煙り出す片影のような皺(しわ)さえも、敏感に見逃(み のが)さない妻の感覚を誤魔化すために、この頃いつもこの結論を用意していなければならなかった。それでも時には、妻の理論は急激に傾きながら、彼の急所を突き通して旋廻することが度々(たびたび)あった。
「実際、俺はお前の傍に坐っているのは、そりゃいやだ。肺病と云うものは、決して幸福なものではないからだ」
彼はそう直接妻に向って逆襲することがあった。