Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

はるはばしゃにのって

機械・春は馬車に乗って

横光 利一

Lisez 機械・春は馬車に乗って (はるはばしゃにのって) de 横光 利一 (よこみつりいち) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 77 492 caractères · 156 écrans

Aozora Bunko

「どうなすったのかしら。お前訊(き)かなかった」

家内の質問に子供は何の興味もなさそうな顔で「知らん」と答えた。外から見てどこと云って面白味のない高次郎氏だったが、篤実な人のことだから陥落の喜びのあまりどこかで酒宴を催し、ふらふらと良い気持ちの帰途自動車に跳(は)ねられたのではなかろうかと私は想像した。それならこれはたしかに一種の名誉の戦死だと思い、すぐ私は二階へ上って加藤家の方を見降した。しかし、家中は葉を落した高い梧桐(あおぎり)の下でひっそりと物音を沈めているばかりだった。そのひと晩は夜の闇が附近いちめんに密集して垂れ下って来ているような静けさで、私は火鉢につぐ炭もひとり通夜の支度をする寂しさを感じた。すると、次の朝になって次男が、

「加藤さんの小父さん、お酒飲んで帰って来たら、電車に突き飛ばされて死んじゃったんだって」とまた云った。

「違うよ。まだ生きてるんだよ」

と長男が今度はどういうものか強く否定した。

「死んだんだよ。死んだと云ってたよ」

とまた次男は声を強め倦(あ)くまで長男に云い張った。どちらがどうだかよく分らなかったが、とにかく不慮の出来事のこととてこちらから訊ねに行くわけにもいかずそのままでいると、その翌日になって高次郎氏の家から葬(とむらい)が出た。