Classiques japonais avec furigana
ja-reading.com
Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
Lisez 次郎物語 (じろうものがたり) de 下村 湖人 (しもむらこじん) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 200 443 caractères · 398 écrans
クリップをかけるだけなので、六七十部ぐらいは大して時間もかからなかった。
名簿を綴じおわると、かれは窓わくによりかかり、じっと眼をとじて考えこんだ。開塾の準備は、これですっかりととのったわけで、天気はいいし、いつもなら、新しい塾生を迎える喜びで胸が一ぱいになるはずなのだが、今度はどうもそうはいかない。開塾が近づくにつれて、かえって気持ちが落ちつかなくなって来るのである。それは、このごろ、ともすると、かれの眼にうかんで来る二つの顔があったからであった。まるで種類のちがった、そして、おたがいに縁もゆかりもない二つの顔ではあったが、それが代わる代わる思い出され、全くべつの意味で、かれの気持ちを不安にしていたのである。
その一つは、荒田直人という、もう七十に近い、陸軍の退役将校の顔であった。
この人は、中尉か大尉かのころに日露戦争に従軍して、ほとんど失明に近い戦傷を負うた人であるが、その後、臨済禅にこって一かどの修行をつみ、世にいうところの肚のすわった人として、自他ともに許している人である。それに家柄も相当で、上層社会に知人が多く、士官学校の同期生や先輩で将官級になった人たちでも、かれには一目おいているといったふうがあり、また政変の時などには、名のきこえた政治家でかれの門に出入りするものもまれではない、といううわさ