Classiques japonais avec furigana
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わすれえぬひとびと
武蔵野
国木田 独歩
Lisez 武蔵野 (わすれえぬひとびと) de 国木田 独歩 (くにきだどっぽ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 94 018 caractères · 192 écrans
十年互いに知りてついに路傍の石に置く露ほどの思いなく打ち過ぐるも人と人との交わりなり、今日見て今夜語り、その夜の夢に互いに行く末を契るも人と人との縁なり。治子がこの青年を恋うるに至りしは青年が治子を思うよりも早く、相思うことを互いに知りし時は互いの命は互いの心に取りかわして置かれぬ、これ相見てより一月とは経たざる間の事なり。親々はこの恋を許さざりき、その故はと問わば言葉のかずかずもて許し難き理由を説かんも、ただ相恋うるが故にこの恋は許さじとあからさまに言うの直截なるにしかず。物堅しといわるる人々はげにもと同意すべければなり。げにそのごとくなりき。かくて治子は都に近きその故郷に送り返され、青年は自ら望みて伯父なる人の別荘に独居し、悲しき苦しき一年を過ぐしたり。
青年は治子の事を思い絶たんともがきぬ、ついに思い絶ち得たりと自ら欺きぬ。自ら欺けるをかれはいつしか知りたれど、すでに一度自ら欺きし人はいかにこれを思い付くともかいなく、かえってこれを自ら誇らんとするが人の情の怪しき作用の一つなり。そこには必ず一個の言いわけあるものなり。この青年はわれに天職ありと自ら約せり。