Classiques japonais avec furigana
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わすれえぬひとびと
武蔵野
国木田 独歩
Lisez 武蔵野 (わすれえぬひとびと) de 国木田 独歩 (くにきだどっぽ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 94 018 caractères · 192 écrans
そして何も言わず、士族屋敷の方へといっさんに駆けていった。
ほかの少年らも驚いて、豊吉を怪しそうに見て、急に糸を巻くやら籠を上げるやら、こそこそと逃げていってしまった。
豊吉はあきれ返って、ぼんやり立って、少年らの駆けて行く後ろ影を見送った。
『上田の豊さんが帰ったそうだ』と彼を記憶しうわさしていた人々はみんなびっくりした。
豊吉二十のころの知人みな四十五十の中老になって、子供もあれば、中には孫もある、その人々が続々と見舞にくる、ことに女の人、昔美しかった乙女の今はお婆さんの連中が、また続々と見舞に来る。
人々は驚いた、豊吉のあまりに老いぼれたのに。人々は祝った、その無事であッたを。人々は気の毒に思った、何事もなし得ないで零落れて帰ったのを。そして笑った、そして泣いた、そして言葉を尽くして慰めた。
ああ故郷! 豊吉は二十年の間、一日も忘れたことはなかった、一時の成功にも一時の失敗にも。そして今、全然失敗して帰ッて来た、しかしかくまでに人々がわれに優しいこととは思わなかった。
彼は驚いた、兄をはじめ人々のあまりに優しいのに。そして泣いた、ただ何とはなしにうれしく悲しくって。