Classiques japonais avec furigana
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しまでをかたる
死までを語る
直木 三十五
Lisez 死までを語る (しまでをかたる) de 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 42 739 caractères · 85 écrans
この表と、裏とを離すのが、両親より遥かに早かった。鋏を一つ、ぱちっと入れると、殆ど、あとは鋏なしで、解いて行く。古着だから、糸が弱っていて、ぶつぶつ切れるが、それを切らずに解くのが技巧で、自分ではおもしろくて、解き物は一手で、引き受けるようになった。
この時分、もう一つ上達したのは、飯焚きと、菜をつくることで――これは、後日になって、私の妻が、貧乏の最中、子供を産んで、寝ている時、私が、幾日か、飯菜を作って、その料理の種類の豊富さと味のよさとに、びっくりさせたものである。沢庵漬から――貧乏ぐらしの惣菜一通りは心得ている。ことごとく幾年か手伝った御蔭である。
十二
高等小学へ行くようになってから、教科書以外の本を買ってもらえるようになった。それも、一冊一月がかりで、だましたり、悲観したり、母から半分もらって、残りをねだったり、相当苦心を必要とした。
その時分、私の家へ一人の食客がくる事になった。松原貴速という人である。その人の為に、物置になっている二階へ、南向きの窓を開けて、畳を敷くことになった。
この松原貴速という人は、長州の俗論党の錚々たる人であったらしく、旧姓山県九郎右衛門という(この人について、御存じの方は御一報願いたい)、後に、石清水八幡の宮司となり、生玉神社にも仕えたが、遂に、浪々の身と