Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

ははのじょうきょう

母の上京

坂口 安吾

Lisez 母の上京 (ははのじょうきょう) de Sakaguchi Ango (坂口 安吾) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 16 655 caractères · 33 écrans

Aozora Bunko

昔から裸で道中はできないといふ。いくら焼跡の浮浪児でも、シャツぐらゐは着てゐるだらう。どうしても家へ帰らねばならなくなつてしまつたのである。母の待つ家へ。ところで、そのときにヒロシがかう言つたものだ。

「ナアさん。お恨みは致しません。運命ですわねえ。あたくし、かうして、おそばに坐つてゐるだけで、しあはせですのよ」

かうして夏川は母の待つ家へ裸で帰つて行つた。まことに星のめぐり合せといふものは仕方がない。作者がいかほど深刻な悲劇をのぞんだところで、事実の方が、かうしてトンチンカンにめぐつて行くのだから仕方がない。

あひにくのことに、母はまだ寝もやらず起きてゐたものだ。障子にその影が見えるのである。すると夏川はむら/\と心が変つた。心が変つたといつたところで、別段大それた心になつたわけでもない。ヒロシが彼のうしろから階段を上つてきたが、急にふりむいてヒロシの手をつかんだものだ。彼は一人では這入つて行けなくなつたのだ。ヒロシは腕をつかまれて、ビックリしたが、彼の魂胆が分ると顔の色を失つた。歌舞伎の舞台で古典的な女の魂を身につけたヒロシは、知らない人の前へ、いや、知るも知らないもあるものか、人前へ裸の身体をさらすなどとは、できるものではない。