Classiques japonais avec furigana
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かごつるべ
江戸情話集
岡本 綺堂
Lisez 江戸情話集 (かごつるべ) de 岡本 綺堂 (おかもときどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 203 779 caractères · 407 écrans
鶯は美しい愛らしい小鳥だ。ことに京は鶯の名所であるから、おれも金に明かし、暇に明かして、思うさまに鳴かして見たが、所詮は一時の興に過ぎぬ。一羽の鳥になずんでは悪い。江戸へ帰ればまた江戸の鶯がある」
「勿論、おれもその鶯を江戸まで持って帰ろうとは思わぬが、鳴く音が余りに哀れに聞えるので、せめて籠から放してやりたいのだ。半九郎は人にも知られた意地張りだが、生まれつきから涙もろい男だ。ありあまる金を持った身でもなし、かつは旅先で工面するあてもない。察してくれ」
半九郎の性質は市之助もふだんから知り抜いていた。そうして、それが彼の美しいところでもあり、また彼の弱いところでもあることを知っていた。遊里の歓楽を一時の興と心得ている市之助の眼から見れば、立派な侍が一人の売女に涙をかけて、多寡が半月やひと月の馴染みのために、家重代の刀を手放そうなどというのは余りに馬鹿ばかしくも思われた。彼は繰り返して涙もろい友達に忠告を試みた。
「して、半九郎。お身は全くその鶯に未練はないな」
「未練はない。くどくも言うようだが、あまりに哀れだから放してやりたい。ただそれだけのことだ」