Classiques japonais avec furigana
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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
かごつるべ
江戸情話集
岡本 綺堂
Lisez 江戸情話集 (かごつるべ) de 岡本 綺堂 (おかもときどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 203 779 caractères · 407 écrans
聞かない振りをして彼は廊下へ出た。次の間にいた浮橋も気の毒なような、困った顔をして、これも黙って送って来た。栄之丞が二階の階子を降りようとする時に、あとから八橋がそっと追って来た。
「みんなあとで判ることでありんす」
彼女は紙につんだ十両を男の手に掴ませた。いっそ叩き返そうと思っても、その手さきは女にしっかり握られているので、栄之丞はどうすることも出来なかった。彼はくすぐったいような心持ちで、とうとうその金をふところに収めて出た。
堤へあがると、うすら寒い風はいつしか凪いで、紫がかった箕輪田圃の空に小さい凧の影が二つ三つかかっていた。堤したの田川の水も春の日に輝いて、小鮒をすくっている子供の網までがきらきらと光って見えた。稽古のために空駕籠を担いで、長い堤を往ったり来たりしている駕籠屋のひたいにも、煙りの出そうな汗が浮いていた。
「寒いようでも、もう春だ」と、栄之丞もふと思った。
そう思いながらも、彼は春らしいのびやかな気分にはとてもなれなかった。懐中にしている十両の金が馬鹿に重いように思われてならなかった。この十両を手切れがわりに貰ったのかと思うと、彼は言うに忍びない屈辱を蒙ったようにも感じた。