Classiques japonais avec furigana
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ぬまち
沼地
Lisez 沼地 (ぬまち) de Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 1 848 caractères · 4 écrans
殊に前景の土のごときは、そこを踏む時の足の心もちまでもまざまざと感じさせるほど、それほど的確に描いてあった。踏むとぶすりと音をさせて踝が隠れるような、滑な淤泥の心もちである。私はこの小さな油画の中に、鋭く自然を掴もうとしている、傷しい芸術家の姿を見出した。そうしてあらゆる優れた芸術品から受ける様に、この黄いろい沼地の草木からも恍惚たる悲壮の感激を受けた。実際同じ会場に懸かっている大小さまざまな画の中で、この一枚に拮抗し得るほど力強い画は、どこにも見出す事が出来なかったのである。
「大へんに感心していますね。」
こう云う言と共に肩を叩かれた私は、あたかも何かが心から振い落されたような気もちがして、卒然と後をふり返った。
「どうです、これは。」
相手は無頓着にこう云いながら、剃刀を当てたばかりの顋で、沼地の画をさし示した。流行の茶の背広を着た、恰幅の好い、消息通を以て自ら任じている、――新聞の美術記者である。私はこの記者から前にも一二度不快な印象を受けた覚えがあるので、不承不承に返事をした。
「傑作です。」
「傑作――ですか。これは面白い。」
記者は腹を揺って笑った。