Classiques japonais avec furigana
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ぬまふじん
沼夫人
泉 鏡花
Lisez 沼夫人 (ぬまふじん) de 泉 鏡花 (いずみきょうか) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 39 541 caractères · 78 écrans
」
と笑いながら、むずと蚊帳を出て、廊下へ寝衣で突立った。
が横向に隣を見て、
「何だ、お前も手水か。馬鹿な、今の話しで不気味だからって。お客様の居る処を、連立って便所へ行く奴があるかい。」
と言う。
小松原が、ト透すと、二重遮って仄ではあるが、細君は蚊帳の中を動かずにいたのである。
「貴郎、」
とこの時、細君の声は、果せる哉、太く震えて、
「貴郎……」
「うむ、」
小松原も蚊帳の中に悚然として、
「酒田。」
と変な声をする。
「誰か居ますか。」
「おお……」
と医師は、蹌踉けたように、雨戸を背に、此方を向き替え、斜めに隣室の蚊帳を覗いた。
「私はここに居ますんですよ。」
「誰だ、今のは?」
うっかり医師が言うや否や……
「厭……」
と立って、ふらふらと、浅黄に白地で蚊帳を潜ると、裙と裙とにばっと挟まる、と蜘蛛の巣に掛ったように見えたが、一つ煽って、すッと痩せたようになって、此方の蚊帳へ――廊下に事はあるものを、夫を力にそこへは出られぬ――腰を細く、乗るばかり、胸に縋った手が白く、小松原の膝にしがみついた。
――この状を……後に、医学士が人に語る。――
「蒼沼の水は可恐しい、人をして不倫の恋をなさしむるかと、私は嫉もうとした。