Classiques japonais avec furigana
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かいなんき
海難記
久生 十蘭
Lisez 海難記 (かいなんき) de 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 28 628 caractères · 56 écrans
邪推すれば、蛮行を見るに耐えないとか、悪行の責任が自分にかかるのを回避したのかとも想像されぬことはない。殊更な分離の真の理由については、六十七歳で死ぬまで、ついに一言も洩らさなかった。博士は「トラルザスの古蹟をしらべて見たかったから」と書いているが、一片のパンも一滴の水もなく、一歩一歩が生命の源泉を疲弊させる絶苦の徒歩を何日かつづけた後、なお且つそういう意慾が湧き起るものであろうか。事実だとするなら、偉大な熱情だというほかはない。
擱坐したラ・メデュウズに残った十七人の情況も、究極になればわかったようなわからないようなところがいろいろと出てくる。五十日の後、救助船が行ったとき、三人だけが檣楼の上に残っていた。あとの十四人のうち、十二人は擱坐後二十日後の朝、小さな筏をつくって船から離れ、一人は、その後、檣の破片に跨ってこれも海に出て行き、あとの一人は病死し、そうして、三人だけが残ったという。
ラ・メデュウズは相当浸水していたが、安全確実に浮洲の上に坐りこんで居り、差当っての危険はなにもないはずであった。ショオマレェ艦隊司令官の期待にかかわらず、この三檣戦艦はいっこうに沈没する模様もなく、その後四カ月の間、堅固な形態を保ちつづけ、十月の末、船腹の銅板を剥ぎとったり、船材を挽きだしたりする公然たる掠奪がはじまっ