Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

しぶやけのしそ

渋谷家の始祖

宮本 百合子

Lisez 渋谷家の始祖 (しぶやけのしそ) de 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 68 023 caractères · 133 écrans

Aozora Bunko

けれども、新らしい佐々家に移ってから、一日一日と日が経るに連れて、彼の心に湧き上って来たものは、一種の感嘆と、同時の羨望である。

屋敷の周囲に槇をずうっと植え込んで、裏の菜園で苺の実熟(みの)るこの家には、五葉の松に手奇麗な霜除をした九段の家とは、何かまるで種類の違った力がある。光る仏壇と、どこか年寄くさい陰気の漂っていた家に比較すると、二人の子供が、キーキー笑い叫びながら芝草の上を転り、燕のようにブランコを振る光景は、何という相異だろう。

犬っころのように、無我な幸福で躍り廻り、跳ね廻る子供に取巻かれながら、散歩する夫人の姿を見ると、正隆は一種表現し難い愛惜を感じずにはいられなかった。過去の追憶もあるだろう、強いても殺戮し続けて来た希望への哀悼もあるだろう。正隆は、一新された環境のうちにあって、共に一新された或る不安定を、彼の生活の根本に於て感じずにはいられなくなって来た。それは、信子夫人を失って以来、十六年間彼が感情に於て否定して来た生活の模型が、ここでは正隆の暗い努力に対してあまり無惨なほど、確実に営まれている、ということなのである。

正隆がどれほど、美しい信子夫人を愛していたか、それはもう問題外である。