Classiques japonais avec furigana
ja-reading.com
Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
しぶやけのしそ
渋谷家の始祖
宮本 百合子
Lisez 渋谷家の始祖 (しぶやけのしそ) de 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 68 023 caractères · 133 écrans
、正隆は、自分の学力と文才とに自信を持っていたのである。
従って、正隆は、自分が留学生として選ばれるということを、殆ど既定の事実のように信じて疑わなかった。
三箇年の海外留学と、かち得べき学位、それ等は、まるで、今までは、絢爛(けんらん)たる光彩を放ちながらも彼方にあった、名誉、栄達、幸福という叢雲の中から、特に彼のために下された、縒金の繩楷子(ばしご)のように見えた。
これからこそ、ほんとによくなるのだ!
その、よくなる、という内容の詳細は、ただ一面の渾沌ではあるにしろ、正隆は、総ての、よりよきものを空想せずにはいられなかった。単に自分だけによいのではない、美くしい、素晴らしい信子のためにもよいのだ、また、小さい、お乳くさい正房のためにもよいのだ、皆によいのだ。皆が、福祉を受けるのだ。その鍵を、今、自分は丹精して鋳つつあるのだという、楽しい意識――。
結婚し、子を持った正隆は、数年前より、遙に単純な心持で、あらゆる仕合わせに面することが出来た。仕合わせと呼ばれる総ての腕に喜んで抱き取られたい、取らせたいという心持が、見えない内に漲っている彼は、ほんとによき父、よき良人らしい熱中さで、彼の裡に共生する幾つかの魂の悦びのために、励し、励まされて、仕事に勤しんだのである。