Classiques japonais avec furigana
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わたらせがわ
渡良瀬川
大鹿 卓
Lisez 渡良瀬川 (わたらせがわ) de 大鹿 卓 (おおしかたく) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 280 528 caractères · 557 écrans
漸く佐野をすぎる頃になると、正造は起ったり掛けたりして、しきりに部落々々を指呼して説明に努めた。線路はいよいよ被害地に添って惨状の遠望が展開しだしたのである。それは薄雲の多い寒空の下に見るからに索莫とした風景であった。吹き散らされる煤煙をすかして、渡良瀬の水面を銀色に望見するのも、思いなしか寒気だつ眺めだった。足利の駅頭には毛野村の岩崎佐十など八九人の被害民が折目だった羽織に草鞋穿きで出むかえていた。なかに上毛新報社長の須永金三郎の姿もみえて、同行の身支度だった。
駅前で昼食をすますと、一同は俥をつらねて先ず足利町を西へぬけて三重村の五十部へ来た。名だたる養蚕地だが、この秋の洪水で渡良瀬の川床が変ったため桑畑が一面の川原になっていた。俥を返し東行して毛野村に入り、川崎、奥戸と渡良瀬川沿いの激甚地を巡った。正造は要所要所で俥をとめては舞でも舞うような手つきで説明した。人々は川原のただ中に身をおいて、その広漠たる荒廃に驚くとともに、農民が茫然自失するのも当然だと惻隠をふくめた。川を渡ると対岸は久野村である。二十三年の破堤の跡を見て下野田、上野田の部落へかかる頃には頭上の凝雲がいつか雨気をふくんであたりが陰気になってきた。