Classiques japonais avec furigana
ja-reading.com
Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
わたらせがわ
渡良瀬川
大鹿 卓
Lisez 渡良瀬川 (わたらせがわ) de 大鹿 卓 (おおしかたく) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 280 528 caractères · 557 écrans
突如として谷の足もとへ体をなげて砂へ額をすりつけると「久野村久保田の稲村与市と申します」と自ら名のった。何事かと見下す谷の目差しにとりすがるようにして、朴訥な必死な気合を見せつつ、
「……鉱毒の害はここにおります者が、一様に蒙っているのでございます。地主も小作人も今日では共に食うにも困る境涯に落ちて、悲歎にくれております。何ひとつ穫れない田地は、もらう者があればただくれてやると申しましても、誰ももらい手さえない有様です。以前一町二町の田地を持っていた者で、日雇となり、下男奉公し、俥夫になった者もございます。祖先から伝った家屋敷は借金のかたにとられ、家財を売れるだけは売り尽して、あとに残った位牌だけをかかえて村を立退いた者もあります。また息子に先立たれた身寄りのない盲目の老婆が、知らぬ他郷で死ぬよりはと申して、他人の納屋の片隅で露命をつないでいる者もございます。村一番の孝行者で、親にろくろく飯を喰べさせることができないのを果無んで首をくくった者もございます」
しばらく声をのみ、また縷々と細民の生活を語りだした。さしもに大勢の群集も、物語りの哀調にさそわれて、思い思いに身の境涯をふりかえる様子であった。