Classiques japonais avec furigana
ja-reading.com
Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
ゆもとのあき
湯元の秋
豊島 与志雄
Lisez 湯元の秋 (ゆもとのあき) de 豊島 与志雄 (とよしまよしお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 2 549 caractères · 6 écrans
熱い鉱泉と共に、時々大きな水泡がぶく……ぶく……と水面に上っては消えた。夕暮の仄暗い靄が沼の上に立ち罩めると、水面からは白く立上る湯気が見られた。
私は岩の上に立ちながら、長い間じっとして、沼の水面を、地下から湧いて来るその熱の湯を、眺めていた。鉱物性の臭いが私の顔にふりかかってくる。私は眩暈に似た一種の夢想のうちに、何か奥深いものを、神秘なものを、見つめていた。そして、ふと我に返ると、冷たい震えが全身に伝わった。山合の谷間から夜の眼が覗いていた。そして東の空に懸った月の光りが鋭く磨ぎ澄されようとしていた。
それでも、その晩私は、長々と身体を湯壺の中に伸し、それからまた洋灯の光りをまじまじと見守った。そして鳴きしきる虫の音をきいた。その時私の心は、それらの湯壺や灯火や虫の声などで纒めらるる世界の外に逸した何かを、じっと、そして漠然と、思い耽っていた。その後で安らかな眠りが私にやって来る……。
斯くて私は秋の二週間許りを湯元で過した。その間に私は何を得、また何を失ったか。それは茲には言えない。ただしいてこの小品の結末をつけんがためには、「太古人間は穴居なりき。