Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

おぼるるもの

溺るるもの

豊島 与志雄

Lisez 溺るるもの (おぼるるもの) de 豊島 与志雄 (とよしまよしお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 17 690 caractères · 36 écrans

Aozora Bunko

声をかけると、じろりと見てから、すぐにはいって来た。二階の室に案内して、あたしは何だか、いつもより丁寧に挨拶をした。その人はマントを着たまま坐っていたが、だいぶ酔ってるらしい眼付と顔付とを、面白そうににこにこさして、三四軒寄ってきたが愉快だったと云った。そして五十銭銀貨を二つ出した。お茶代をつけてとあたしが云うと、笑って頭を振った。親切な女がいて、あそばないでお茶だけならそれでいいと教えてくれたって……。そしてその女の名刺を持っていた。知ってる女だった。あたしは名刺をひったくった。それからお茶をくんでくると、その人は急に真面目な顔で、先刻の名刺を返してくれと云った。返すものかとあたしは思った。そんなら眼の前で破いちまえ、というのがあたしの気に入った。名刺を返すと、その人はそれを裂いて火鉢の火にくべた。あたしは胸がさっぱりした。

翌日の昼間、やはりあたしがお店に出てる時、その人が、考えこんだように足先に眼を落して、ゆっくり通りかかった。あたしは声をかけた。その人は立止って、じっとあたしの方を見ていたが、いきなり大きな声で、ああ君か、と云った。そしてはいってきた。