Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

おぼるるもの

溺るるもの

豊島 与志雄

Lisez 溺るるもの (おぼるるもの) de 豊島 与志雄 (とよしまよしお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 17 690 caractères · 36 écrans

Aozora Bunko

マントを着た背の高い男と、コートを着た背の低い女だ。低いというほどじゃないかも知れないが、男が高いので低く見えた。

向うではゆっくり歩いていたが、俺の方は急いでいたので、すぐに近づいた。一寸綺麗な女だった。眉を長くひいた眼瞼のくっきりした、細面のその顔が、素人ではなかった。そして……。

おや! と俺は思った。帽子を目深にかぶってる近眼鏡の、その男の顔に見覚えがあった。

チッ……俺は舌を鳴らして、物に躓いた風をして、道の端までよろけて、丁度そこにあった電燈の柱につかまって、屈みこんで下駄の鼻緒を調べる様子をした。燈台と同じに電燈も下暗しだ。その影から俺は、まともに光を受けてる男の顔を、横目ではっきり見て取った。片岡さんだ。片岡正夫だ。

十日ばかり前に一度逢ったきりだったが、俺はその顔とその名前とをよく覚えていた。人の顔や名前を記憶するのは大事な才能だ。

仲間の者二三人と、浅草の或るカフェーにはいった時、へぼ文士のジプさんが、雀の巣のような頭をした男と酒を飲んでいた。ジプさんというのは内緒の渾名で、雑文や批評や小説や戯曲や何でもかでも書きとばし、それを時々どこかにのせて貰い、三十すぎた独身者で、始終市内をうろつき、公娼でも私娼でも女給でも、相手は構わないが決して一人に馴染まない、凡ての点に於て僕は天下のジプシー