Classiques japonais avec furigana
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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
おぼるるもの
溺るるもの
豊島 与志雄
Lisez 溺るるもの (おぼるるもの) de 豊島 与志雄 (とよしまよしお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 17 690 caractères · 36 écrans
ただ真暗なものを、一心に見つめてるきり……なんにもありゃしないわ。」
壁に軽く背をもたして、唇の先で煙草の煙を吐きながら、そんなことを云う彼女の顔には、どこかつんとした意地っ張りなところがあって、その眼には、鈍い視線の上に光が浮いていた。
彼女は今年二十三、丙午の歳だった。
「大変な歳に生れついたもんだね。九族を殺すっていうよ。」
「九族……?」
「親子兄弟、一家眷族を、みんな打負してしまうんだ。」
「そう。やっぱりどこか強いのね。」
他人事のように彼女は云って、淋しい笑いをした。
私は杯を重ねた。
酒はごくいいのを頼んで、それを二本か三本、つまみ物としてはただ海苔と※の類、初めから酔ってる時には砂糖水、そして彼女と一時間か二時間、取り留めのない話をした。
それだけで私には充分だった。私は彼女の肉体を漁りに来てるのでもなければ、彼女を愛してるのでもなかった。その愛慾の巷で時間を過すことによって、新たな生活の出発の一歩を、実人生に根を下した力強い一歩を、見出そうとしてるのだった。彼女はただ仮りの相手に過ぎなかった。――時によると、表を、新内の流が通った。ヴァイオリンの俗謡が響いた。