Classiques japonais avec furigana
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せんこうてい「ハビヒツブルグ」
潜航艇「鷹の城」
小栗 虫太郎
Lisez 潜航艇「鷹の城」 (せんこうてい「ハビヒツブルグ」) de 小栗 虫太郎 (おぐりむしたろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 132 395 caractères · 263 écrans
それからはこの島に――といっても、当分のあいだではあるが――埋立地から出る、渡船で聯絡するようになった。そうして、東京という大都市のなかに、見るも黄昏れたような孤島が作られることになったのである。
さて私は、その出島に起った、世にも凄惨な人間記録を綴ろうとするのであるが、それは、鵜の羽音でも波浪の響でもなく、陰々と、地下にすだく地蟲の声なのであった。
その夜、洲蘆の出島を、最後の渡船が出たのは、十時過ぎであった。
この数日来の降り続きで、いまも、心の底に浸みとおるような霧雨が降っている。渡船には、頭巾を冠った巡査が一人だけ乗っていて、寒さに手足をすぼめ、曳船の掻き立てるすさまじい泡を眺めていた。
出島には、もう一点の灯りも見えない。
多くの船体が、雨脚のなかに重なり合って暈されている。
すると、その巡査が、なにを見たのかいきなり舳に屈みかかった。
「あっ、人間だ※(感嘆符疑問符、1-8-78)」
見ると泡の薄れた、船脚の底からスウッと影を引いて、淡い、どうやら人容らしいものが現われてきた。
が、すぐにそれが、気の迷いでもあったかのように、ふたたび泡立ちはじめた河面のなかに隠れてしまったのである。