Classiques japonais avec furigana
ja-reading.com
Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
みおつくし
澪標・落日の光景
外村 繁
Lisez 澪標・落日の光景 (みおつくし) de 外村 繁 (とのむらしげる) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 130 889 caractères · 268 écrans
夢の中で、或いは酔いの中で、私の妄想が四年前の妻の姿を描き出したのではない。妻の上半身は裸ではない。勤め帰りのままの姿である。しかも朦朧とした姿ではない。私は妻のスーツの色も柄もはっきりと思出すことができる。
女中の敏子が雨戸をしめに来る。そう言えば、原稿用紙の上の摩ガラスの模様もいつか消えてしまっている。それどころではない。庭には暮色が漂い、部屋の中も薄暗い。私は急いで電灯のスウィッチを拈る。
それにしても妻は何をしているのだろう。或はそれほど案じることもなかったのかも知れない。若しも悪性のものであったら、いかに気丈の妻でも走り帰って来るに相違ない。私は強いてそう思込むことによって、気持を鎮めようとする。が、その後から新しい不安が湧き起る。
玄関の扉が開く。貞子が帰って来たのである。
「どうだった」
妻が書斎に入って来て、私の前に坐ったのと、私が思わず立ち上り、そう言ったのとは、殆ど同時である。従って、妻は私を少し見上げる風にして言う。
「覚えていて下さったの。昨夜はかなり廻ってたようだから、忘れていらっしゃるかと思ってた」
ひどく落着きはらった妻の態度に、私は思い返し、ともかく妻の前に坐る。