Classiques japonais avec furigana
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くるいだこ
狂い凧
梅崎 春生
Lisez 狂い凧 (くるいだこ) de 梅崎 春生 (うめざきはるお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 111 430 caractères · 226 écrans
だから誰も席をゆずりたくない。そんな汽車におれが乗込んで、皆困っただろうと今思うよ。遺骨という大義名分を振りかざして、斬り込んで行ったようなものだからねえ。居眠りをよそおっている奴もいた」
「で、君はその学生にお礼を言ったのか?」
「言わないさ。言わないで、実に平然として腰をおろした」
栄介は語調を強めた。
「何故なら、学生はおれにゆずったんじゃない。遺骨に席をゆずったんだ」
妙な理屈だと思いながら、私は黙って聞いていた。
「坐れたけれども、それからがたいへんだった。居眠りが出来ないんだ。眼をつぶる分にはいいけれど、うとうととすると、身体が前のめりになって、箱が膝から落ちそうになる。ハッと気がついて、姿勢を元に戻す。またうとうととして目覚める、という具合で、結局故郷の駅に降り立つまでに、おれは確実に一貫目はやせたね。ほんとにあの遺骨受領は、難行苦行だったなあ。まだ若い頃だから保ったけれど、今のおれならとても出来ることじゃない」
キャンバス椅子の上で栄介は背伸びをした。
「家にたどりついて、箱をあけて見ると、骨壺があった。蓋をあけると、骨の破片が少量入っていたよ」