Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

くるいだこ

狂い凧

梅崎 春生

Lisez 狂い凧 (くるいだこ) de 梅崎 春生 (うめざきはるお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 111 430 caractères · 226 écrans

Aozora Bunko

ある日の夕凪ぎの時のことであった。栄介は病室に坐っていた。すると福次郎が何かしゃべり出した。意味がよく判らない。何度も聞き返して、やっと理解出来た。

「女はまだか。早く階下から連れて来い」

ここはどこだと、栄介は反問した。すると福次郎は隣県の市の遊廓の名を言った。福次郎はその娼家の一軒の二階にいるつもりらしい。県庁時代か会社勤めの時、出張を命じられて、その経験がよみがえって来たのだろう。栄介は答えた。

「ここはそんなとこじゃない。うちなんだよ」

しかし福次郎は納得しなかった。早く連れて来いとじれて、栄介が動かないと見るや、動かせる方の足をにゅっと伸ばして、足指でいきなり栄介のふくら脛を、蟹のようにギュッとはさんだ。それはおそろしいほどの力で、栄介は思わず悲鳴を立てた。病人にどうしてこんな力があるのだろう。

「参った。参った。お父さん」

はさみついて離れない父親の足指を、苦労して外して、栄介はあやまった。部屋を飛出して三十分経って戻って来ると、福次郎はもうそのことは忘れていた。このことはもちろん、母親や幸太郎には話さなかった。紫色のアザだけが、しばらく栄介の脛に残っていた。