Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

きつね

狐

永井 荷風

Lisez 狐 (きつね) de 永井 荷風 (ながいかふう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 9 770 caractères · 20 écrans

Aozora Bunko

暗澹たる空は低く垂れ、立木の梢は雲のように霞み渡って居ながら、紛々として降る雪、満々として積る雪に、庭一面は朦朧として薄暮よりも明かった。母と二人、午飯を済まして、一時も過ぎ、少しく待ちあぐんで、心疲れのして来た時、何とも云えぬ悲惨な叫声。どっと一度に、大勢の人の凱歌を上げる声。家中の者皆障子を蹴倒して縁側へ駈け出た。後で聞けば、硫黄でえぶし立てられた獣物の、恐る恐る穴の口元へ首を出した処をば、清五郎が待構えて一打ちに打下す鳶口、それが紛れ当りに運好くも、狐の眉間へと、ぐっさり突刺って、奴さん、ころりと文句も云わず、悲鳴と共にくたばって仕舞ったとの事。大弓を提げた偉大の父を真先に、田崎と喜助が二人して、倒に獲物を吊した天秤棒をかつぎ、其の後に清五郎と安が引続き、積った雪を踏みしだき、隊伍正しく崖の上に立現われた時には、私はふいと、絵本で見る忠臣蔵の行列を思出し、ああ勇しいと感じた。然し真近く進んで、書生の田崎が、例の漢語交りで、「坊ちゃん此の通りです。天網恢々疎にして漏らさず。」と差付ける狐を見ると、鳶口で打割られた頭蓋と、喰いしばった牙の間から、どろどろした生血の雪に滴る有様。