Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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ねことしょうぞうとふたりのおんな

猫と庄造と二人のおんな

谷崎 潤一郎

Lisez 猫と庄造と二人のおんな (ねことしょうぞうとふたりのおんな) de 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 68 020 caractères · 131 écrans

Aozora Bunko

私決して悪いことは申しません、私のためより貴女のため思うて上げるのです、あのリリーちゃんあの人の側から早う離してしまいなさい、あの人それを承知しないならいよいよ怪しいではありませんか。………

福子はこの手紙の一字一句を胸に置いて、庄造とリリーのすることにそれとなく眼をつけているのだが、小鰺の二杯酢を肴にしてチビリチビリ傾けている庄造は、一と口飲んでは猪口を置くと、

「リリー」

と云って、鰺の一つを箸で高々と摘まみ上げる。リリーは後脚で立ち上って小判型のチャブ台の縁に前脚をかけ、皿の上の肴をじっと睨まえている恰好は、バアのお客がカウンターに倚りかかっているようでもあり、ノートルダムの怪獣のようでもあるのだが、いよいよ餌が摘まみ上げられると、急に鼻をヒクヒクさせ、大きな、悧巧そうな眼を、まるで人間がびっくりした時のようにまん円く開いて、下から見上げる。だが庄造はそう易々とは投げてやらない。

「そうれ!」

と、鼻の先まで持って行ってから、逆に自分の口の中へ入れる。そして魚に滲みている酢をスッパスッパ吸い取ってやり、堅そうな骨は噛み砕いてやってから、又もう一遍摘まみ上げて、遠くしたり、近くしたり、高くしたり、低くしたり、いろいろにして見せびらかす。