Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

げんだいしょうせつてんぼう

現代小説展望

豊島 与志雄

Lisez 現代小説展望 (げんだいしょうせつてんぼう) de 豊島 与志雄 (とよしまよしお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 35 254 caractères · 70 écrans

Aozora Bunko

笹村は産室の隅の方からこわごわそれを眺めていたが、啼声を立てそうにすると体が縮むようであった。ここでは少し遠く聞える機械鍛冶の音が表にばかりで、四辺は静かであった。長いあいだの苦痛の脱けた産婦は、「こんな大きな男の子ですもの」という産婆の声が耳に入ると、漸と蘇ったような心持で、涙を一杯ためた目元ににっこりしていたが、直に眠に沈んでいった。汗や涙を拭取った顔からは血の気が一時に退いて、微弱な脈搏が辛うじて通っていた。

産婆は慣れた手つきで、幼毛の軟い赤児の体を洗って了うと、続いて汚れものの始末をした。部屋にはそういうものから来る一種の匂が漂うて、涼しい風が疲れた産婦の顔に、心地よげに当った。笹村の胸にも差当り軽い歓喜の情が動いていた。

(徳田秋声――黴)

こういう描写を読むと、吾々は作者の冷徹な態度に心を打たれる。そこには何等主観の動きはなく、ただ対象をじっと眺めてる眼があるばかりである。そして分娩の光景がまざまざと現出されている。現実の厳粛さといったようなものがある。けれども、吾々はまた、たとえこの作が「黴」という題名の示す作意に成ったものであろうとも、一種不満な焦躁を感ずる。