Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

せいとしとのきろく

生と死との記録

豊島 与志雄

Lisez 生と死との記録 (せいとしとのきろく) de 豊島 与志雄 (とよしまよしお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 18 961 caractères · 39 écrans

Aozora Bunko

芳子は黙って首肯いた。暫くして私はまた赤ん坊の顔を覗き込んだ。指先でその頬に触ってみた。絹のように柔かだった。

芳子は、何とも云えない引き締った笑顔をした。私はその時ふと日数をくってみた。堯の誕生日は一月十一日だった。丁度その日から今日まで二百八十日余りになっていた。吉とも凶ともつかない気持ちが私に湧いて来た。然し私は力強くなった。手をしっかり握りしめた。

私は次の室に来て暫くT君と話した。堯の容態をきいてT君はきっと唇を結んでいた。

「また来るから。」とT君は帰る時に云った。

「ああ。然し大丈夫だ。いけなくても今夜の夜中だろう。いや、あしたの夜明けが危険かも知れない。」と私は云った。

私はぼんやり室に寝転んで天井を見つめていた。

「あなた!」と芳子が云った。

「何だ?」

「早く病院の方へ。」

「うむ。」

私はそれでも暫くじっとしていた。そして十一時すぎに家を出かけた。

「今度帰って来る時は、堯を抱いて来るかも知れない、俥だったらそうだから。」

芳子は首肯いた。

「いいかい。」そう云って私は芳子の眼を覗き込んだ。「分るだろう。」

「ええ。」と芳子はきっぱり答えた。