Classiques japonais avec furigana
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うみがめ
異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二
岡本 綺堂
Lisez 異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二 (うみがめ) de 岡本 綺堂 (おかもときどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 144 507 caractères · 291 écrans
重兵衛はその眼先へ竹の皮包みを開いて突きつけると、紅い生姜は青黒い海苔をいろどって、子供の眼にはさも旨そうにみえた。
「それみろ、旨そうだろう。お礼をいって、早く食え。」
太吉は父のうしろに隠れたままで、やはり黙っていた。
「早くおあがんなさい。」と、旅人も笑いながら勧めた。
その声を聞くと、太吉はまた顫えた。さながら物に襲われたように、父の背中にひしとしがみ付いて、しばらくは息もしなかった。彼はなぜそんなにこの旅人を恐れるのであろう。小児にはあり勝ちのひとみしりかとも思われるが、太吉は平生そんなに弱い小児ではなかった。ことに人里の遠いところに育ったので、非常に人を恋しがる方であった。樵夫でも猟師でも、あるいは見知らぬ旅人でも、一度この小屋へ足を入れた者は、みんな小さい太吉の友達であった。どんな人に出逢っても、太吉はなれなれしく小父さんと呼んでいた。それが今夜にかぎって、普通の不人相を通り越して、ひどくその人を嫌って恐れているらしい。相手が子供であるから、旅人は別に気にも留めないらしかったが、その平生を知っている父は一種の不思議を感じないわけにはいかなかった。