Classiques japonais avec furigana
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うみがめ
異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二
岡本 綺堂
Lisez 異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二 (うみがめ) de 岡本 綺堂 (おかもときどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 144 507 caractères · 291 écrans
今夜の撰句の噂なども仕尽くして、ふたりは黙って俯向いて歩いていると、野童は突然にわたしの外套の袖をひいた。
「矢田さん。」
「え。」
「あすこに何かいるようですね。」
わたしは教えられた方角を透かして視ると、そこには小さい弁天の祠が暗いなかに立っていた。むかしは祠のほとりに湖水のような大きい池があったと言い伝えられていたが、その池もいつの代にかだんだんに埋められて、今は二三百坪になってしまったが、それでも相当に深いという噂であった。狭い境内には杉や椿の古木もあるが、そのなかで最も眼に立つのは池の岸に垂れている二本の柳の大樹で、この柳の青い蔭があるために、春から秋にかけては弁天の祠のありかが遠方から明らかに望み見られた。その柳も今は痩せている。その下に何物かがひそんでいるらしいのである。
「乞食かな。」と、わたしは言った。
「焚火をして火事でも出されると困りますね。」と、野童は言った。
去年の冬も乞食の焚火のために、村の山王の祠を焼かれたことがあるので、私は一応見とどける必要があると思って、野童と一緒に小さい石橋をわたって境内へ進み入ると、ここには堂守などの住む家もなく、唯わずかに社前の常夜燈の光りひとつが頼りであるが、その灯も今夜は消えているので、私たちは暗い木立ちのあいだを探るようにして辿って行くほかはなかった