Classiques japonais avec furigana
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うみがめ
異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二
岡本 綺堂
Lisez 異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二 (うみがめ) de 岡本 綺堂 (おかもときどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 144 507 caractères · 291 écrans
「今晩は……。やあ、冬坡君もいたのか。」
そうは言ったものの、彼は俄かに口をつぐんで、わたし達の顔をじっと眺めていた。普通の立ち話以外に何かの子細があるらしいことを、彼もすぐに覚ったらしい。飛んだ邪魔者が来たとは思ったが、わたしも笑いながら挨拶した。
「君と今ふざけていたのは誰だね。」
「え。あれは……。」と、野童は冬坡の顔をみながら再び口をつぐんだ。
「ああ、それじゃあ冬坡君のおなじみかね。」
わたしは再び見かえると、女の姿はいつの間にか消えてしまって、あたりを包む夕闇の色はいよいよ深く迫って来た。
野童はおとといの晩わたしに向って、冬坡君は弁天さまへ夜詣りをする訳があると言った。してみると、彼は冬坡について何かの秘密を知っているらしい。その秘密はかの芸者に関係することではあるまいか。しかしそれだけのことならば、いかに内気の青年であるといっても、冬坡が堅く秘密を守るほどの事もあるまい。いずれにしても、野童と冬坡とは別々に取調べる必要がある。ふたりが鼻を突き合せていては、その取調べに不便があると思ったので、わたしはここで、ひとまず冬坡を手放すことにした。