Classiques japonais avec furigana
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しろくれない
白くれない
夢野 久作
Lisez 白くれない (しろくれない) de 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 24 846 caractères · 50 écrans
われ、生れて初めての強敵を刺止めし事とて、ほつと一息、長き溜息しつゝ、あたり見まはす折しもあれ最前の若衆、血飛沫乱れ流れたる明障子を颯と開きて走り寄り、わが腰衣に縋り付きつゝ、やよ鬼三郎ぬし。わらはを見忘れ給ひしかと云ふ。驚きて振上げし血刀を控へつゝ、よく/\見れば這は如何に。故郷唐津にて三々九度の盃済ましたるまゝ閨の中より別れ来りし彼の花嫁御お奈美殿にぞありける。
こは夢か。まぼろしか。如何にして斯かる処に居給ふぞ。此の和尚は御身の如何なる縁故に当る人ぞと畳みかけて問ひ掛くるに、その時、お奈美殿の落付きやう尋常ならず。そのお話は後より申上ぐべし。まづ/\此の死骸を片付くるこそ肝要ならめ。参詣の人々の眼に止まりなば悪しかりなむ。こや/\馬十よ/\。お客様に水参ゐらせぬか。荒縄持ちて来らずやと手をたゝくに、最前の逞ましき寺男、勝手口より落付払ひて、のそ/\と入り来り、改めてわれに一礼し、柄杓の水を茶碗に取りてわれにすゝめ、和尚の死骸を情容赦もなくクル/\と菰に包み、荒縄に引つくゝりて土間へ卸しつ。さて血潮にまみれたる障子と板の間を引き剥がし、裏口を流るゝ谷川へ片端より投込む体、事も無げなる其面もち。