Classiques japonais avec furigana
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しらぎく
白菊
夢野 久作
Lisez 白菊 (しらぎく) de 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 12 486 caractères · 25 écrans
と思い思い虎蔵は、仄かな赤い光りに照らし出された花壇の片隅を、暫くの間、見下していた……が……それでも僅かに残った糸のような未練と、万一の場合の逃走力を空頼みにした彼は、彼の生涯の運命を賭ける気持で、扉の把手を確りと掴んだ。ソーッと右へ捻じってみた……。
……アッ……と声を挙げるところであった。電気に打たれたように階段を二三段飛び降りた。
扉は何の締りもしてなかった。僅かな力で把手を捻じられた扉が、音もなく開くと、思いもかけぬ赤い光りの隙間が、彼の鼻の先に、縦に一直線に出来たのであった。
虎蔵はジリジリと首を縮めた。背中を丸くして膝を曲げた。息を殺して背後を見廻わした。どこからか怪しい物音が近付いて来はしまいかと、耳を澄まし、眼を凝らしながら身構えていたが、そのうちに薄黒いダンダラを作った花壇の向う側の暗黒を、白々と横切っている混凝土塀に眼を止めると、彼は思わずニンガリと冷笑して首肯いた。ゆるゆると背中を伸ばしながら、眼の前の赤い光りの隙間をかえりみた。
……ハハン……あの高土塀が在ると思って、安心してケツカルんだな……。
そう思い付くと同時に、虎蔵の全血管の中に新しい勇気が蘇って来た。