Classiques japonais avec furigana
ja-reading.com
Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
しろあり
白蟻
小栗 虫太郎
Lisez 白蟻 (しろあり) de 小栗 虫太郎 (おぐりむしたろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 54 099 caractères · 106 écrans
すると滝人は、稚市をいつもの籠に入れて、しっかりと肩につけ、再び人瘤を名残り惜しそうに顧みた。
「それでは、今日はこれでお暇いたしますわ。でも御安心くださいませ。容色の点では、もう見る影もございませんけれど、身体だけは、このとおり、すこやかでございますから」
その時、あの滅入るような黄昏が始まっていた。八ヶ岳よりの、黒い一刷毛の層雲の間から、一条の金色をした光が落ちていて、それは、瀑布をかけたような壮観だった。そして、その余映えに、騎西家の建物の片側だけが、わずかに照り映えて、その裏側のほうからまったくの闇が、静かに微光の領域を狭めてゆく。しかし、滝人が家近くまで来ると、どこからとなく、肉の焦げる匂いが漂ってき、今日も猟があり、兄弟二人も、家に戻っているのを知った。十四郎兄弟は、陥穽を秘かに設えて置いて、猟人も及ばぬ豊猟を常に占めていたのである。
騎西家の建物は、充分時代の汚点で喰い荒され、外面はすでにボロボロに欠け落ちていて、わずかにその偉容だけが、崩壊を防ぎ止めているように思われた。そして、全体が漆のような光を帯び、天井などは貫木も板も、判らぬほどに煤けてしまっていて、どこをのぞいてみても、朽木の匂いがぷんぷん香ってくるのだった。