Classiques japonais avec furigana
ja-reading.com
Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
かぐらざか
神楽坂
矢田 津世子
Lisez 神楽坂 (かぐらざか) de 矢田 津世子 (やだつせこ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 19 611 caractères · 40 écrans
秋風が立ち初める頃尾鰭の長い方が死んでから残った一匹もめっきり元気がなくなって、この節では硝子に円い口をつけたままじっとしていることが多い。
広い世間を肩身狭く、窮屈に渡らなければならない自分が、お初はみじめでならない。馬淵の内儀さんが亡くなって、そのあとへ自分がなおったとしても世間の人たちは妾の成り上りとしか思わないだろう。爺さんの内儀さんになってもそんな思いをする位なのだから、まして今の暮しが肩身の狭いのも無理がない。お初はどっちへ向いても窮屈な自分を考える。どうせ、この世を狭く窮屈に渡らなければならないのなら、呑気な今の妾ぐらしの方が気が安い、と思ったりした。
今日は魚辰へたのんで様子をきかせてみよう、と母娘のものが話しているところへ、
「ごめんよ」
と三和土を入ってくる爺さんの下駄の音である。さきになってとっとと二階へ上って、
「どうもねえ、うちの内儀さんもいよいよ駄目だよ。ゆうべっから、もう、ろくすっぽ口もきけない仕末だ」
と、腕ぐみをしたまま暗い顔で考えこんでいる。お初が何か問うても「うん」とか、「いや」とか頷くだけで、そんなちょっとの間も心は内儀さんへ奪われているという様子である。