Classiques japonais avec furigana
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しほんたいへいき
私本太平記
吉川 英治
Lisez 私本太平記 (しほんたいへいき) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 126 598 caractères · 254 écrans
――即日、彼は、川止めの関を放ち、辻結びを解き、また藤井寺の囚人溜りへ数珠ツナギにしておいた散所民を、みな解いて、
「いのち冥加な虫ケラどもだ。六波羅へ送られれば、どいつもこいつも、投げ込み墓に入るところを、これも鎌倉殿のお情け。ありがたく心得ろ」
と、恩に着せて放った。
それらの釈放人のうちには、舟芸人の雨露次もいたし、彼の妻の卯木も、もちろん、交じっていなければならぬはずだった。
「ひどいなア。……まるで野盗が住んだあとみたいにして行きおった」
藤井寺の堂守は、ひとりで腹をたてていた。
むりはない。その日、本庄鬼六らの六波羅兵が、急に引き払って行った跡の景は、なんとも狼藉なものだった。いくら無住同様な寺にせよ、欄や建具は手当り次第、薪にしているし、大小便をした坑に土さえ埋けて行こうとした様子もない。
「……が、まあまあ白鳳期の御本尊、石川観音の御像が持ち出されて、焚き物にされなかっただけでも、目ッけものか」
堂守の一僧は、ぼやきながらも、やがて箒を手に、片づけはじめた。時代の良民は、みなそうだったろうが、天災に会ったような諦め顔が、彼の、せッせと働き出す姿にもあった。