Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

しほんたいへいき

私本太平記

吉川 英治

Lisez 私本太平記 (しほんたいへいき) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 126 598 caractères · 254 écrans

Aozora Bunko

彼も全身をそそけ立てた。突然、土倉の近くを、駈け乱れる跫音がしたのだ。おもわず、外へ、

「豊麻呂」

二度ほど呼んだが、その時、豊麻呂の答えもなかった。

「ついに来たか」

彼の手は、ふところの毒薬の一包を、無意識に触れていた。

たとえ、幕吏がこれへ踏み込んで来ても、生ける俊基を捕えることはできないのだ。彼らは毒を嚥んだ死骸を見て茫然とするだけだろう。――俊基は、その光景を思いながら、しいて心に嘲笑をたたえた。しかしまた、咄嗟には、秘勅の書を、どう処理するかに、はたと迷った。

「ここには、灯もない。灰とすべき火もなくては?」

とたんに、がらっと、土倉の扉があいた。

外の赤い闇を後ろに、数名の影がそこに見えた。太刀の柄へかかッた俊基の右手は、盲目的にそれへ向って、抜き打ちを加えようとした。

「私ですっ」

跳び退いた一人がさけんだ。

「――弁ノ殿、菊王でございまする」

「やっ、戻ったか」

「仔細あって、遅くなりました。おゆるし下さいませ」

「して、頼春は」

「残念ですが、頼春どのは、たッた今、捕われました。わざと、弁ノ殿に似せて、みずから捕われて行ったのでございまする」