Classiques japonais avec furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(三)
吉川 英治
Lisez 私本太平記(三) (しほんたいへいき) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 222 108 caractères · 446 écrans
「いざ、お供を」
そこから、おん輿は、法師武者に舁かせ、聖尋は奈良入りの先駆を勤めた。
ただし、このさい直接、奈良の東南院へ潜幸されたとなす説と、一夜は唐招提寺に入御して、奈良の動静をたしかめたうえ行かれたという二説がある。
が、いずれにしても、まもなく東大寺の東南院におちつかれ、ただちに別当聖尋から、廻状して“――天皇、難ヲココニ避ケ給フ”と、衆徒に披露し、そして東大寺大衆の協力を求めたことには間違いない。
ところが、この反応は、きわめて複雑な波紋をその日にもう描きはじめた。
「いかにとはいえ」
批評桟敷は彼らの得意なのである。たちまち、ごうごうと、あげつらう声が多かった。
「九五ノ尊たるお身をもって、余りにも、軽々しい」
「おんみずから、皇居を捨て、都を空都となし給い、わずかな公卿ばらのみお連れあって、そも何の大策を、お持ちあるのか」
「やんぬる哉、世の辛きを御存知ないのだ。これが貴人の白日夢でなければまあ倖せだが」
その上にも、おなじ東大寺中でも、西院の主僧、顕実は北条高時の一族の出で、しかも衆徒の間に強大な潜勢力をもっていた。
どこでもだが、奈良もまた一色ではない。