Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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しほんたいへいき

私本太平記(四)

吉川 英治

Lisez 私本太平記(四) (しほんたいへいき) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 229 324 caractères · 458 écrans

Aozora Bunko

と、述べ終った。

「いやまだある」と、高氏は相拍子を打つように。「――わが手に五百、総勢は三千六百騎だ。……充分充分」

「が、ただひとつ、遺憾がございまする」

「何が不足か」

「まだ細川がここに会しておりませぬ。細川和氏、弟頼春、掃部助ら、いいあわせたように見えませぬ」

「駈け遅れか。いまに見えよう」

「いや、異心ではないかと、日頃の態からみても怪しまれまする。万一にも、さようなときは、われら郷党の手で血まつりにいたす所存でございますが」

「はて、気短な」と高氏は笑って見せた。「わしにまかせろ。そんなことは、わしの分別に預けておけ」

あくる日、高氏は伯父の上杉憲房を、矢作の上流二里ほどな額田郡細川村へ使いにやった。

同族の一家細川和氏の郷土である。もちろん不参の意をさぐらせるためだったが、高氏は、

「たとえ、我は宗家であろうと、平常なんらの扶持を与えてきた者ではない。辞をひくくして参陣をすすめるがいい。たやすく事に与さぬこそ、じつは頼もしい者かもしれぬ」

と、憲房の老熟な思慮にくれぐれ善処を依嘱した。

三河足利党は十九家もある。だがその一家といえ、ここで会同の陣に欠けることは、彼の門出としては一大蹉跌だ。