Classiques japonais avec furigana
ja-reading.com
Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
くうしゅうかのにほん
空襲下の日本
海野 十三
Lisez 空襲下の日本 (くうしゅうかのにほん) de 海野 十三 (うんのじゅうざ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 14 527 caractères · 30 écrans
若い女は、もう気が狂っているのでもあろうか、愛児の叫び声も耳に入らないようだ。必死にとり縋られて、どうとその場に倒れると、もうホスゲンが肺一ぱいに拡がったのか、立ち上る力もないようだ。哀れ死に行こうとする親子三名!
そのとき前の商家から、主人らしい男が、瓦斯マスクをかけて飛び出してきた。この様子を内から見ていたものと見え、傍によって、何事かを喚くと、そのまま起ち上って向うの辻に消えた。
するとその辻から担架隊がやって来た。例の男が連れて来たのだ。担架隊員はマスクをかけているが、服装からいうと、女学生らしい。手際も鮮かに、担架の上に三人を収容すると、瓦斯避難所の方へ駈け出した。親子の命はやっと救われたようだ。
発見者の男は、また家の中へ引っかえした。しかし彼は唯一人で土間に頑張っている。襖を開けて室に入ろうとはしない。それもその筈で、その室の中には、彼以外の全家族が入っているのだ。皆、マスクがない。その室はすっかり密閉され、隙間隙間には目ばりを施し、その内側へはカーテンを二重に張り廻し、天井は天井で消毒剤が一面に撒いてあるのだった。マスクのない代りに、一時凌ぎの瓦斯避難室を作ったわけだ。