Classiques japonais avec furigana
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くうしゅうそうそうきょく
空襲葬送曲
海野 十三
Lisez 空襲葬送曲 (くうしゅうそうそうきょく) de 海野 十三 (うんのじゅうざ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 95 012 caractères · 189 écrans
その狂乱の巷の真ッ唯中に、これは、ちと風変りな会話をしている二人の男があった。
「旦那、もし、旦那」印袢纏を着ていることが、紺の香で、それと判った。
「ウ、なんだネ」
こっちは、頤髯がある――向う側のビルディングの窓硝子が照空灯の反射で、ピカリと閃いたので、その頤髯が見えた。
「いま、何時ごろでしょうかネ」熱ッぽい、調子外れの声が、きいた。
「そうだナ――」頤髯男は、どッと、ぶつかってくる避難民の一人を、ウンと突き戻すと、クルリと後を向いて、夜光時計の文字盤を眼鏡にスレスレに近づけた。
「ああ、午後九時だよ」
「九時ですかい」印袢纏は、間のぬけた声をだした。
「今夜は、莫迦に、夜が永いネ」
「ほほう」髯は、暗闇の中で、眼を丸くしたのだった。
「君は、ずいぶん、落付いてるナ」
「旦那は、どこへ逃げなさるんで……」
「僕かい?」髯は、湖のような静かな調子で云った。
「僕は、これから、研究室へ、出勤するんだ」
「冗談じゃありませんぜ、旦那」印袢纏が呆れたような声をだした。「夜更の九時に、出勤てのは、ありませんよ。それに、旦那の行くところはどちらです」
「神田の駿河台だよ」
「へへえ、すると旦那は、お医者さまかネ」