Classiques japonais avec furigana
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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
むらさきのびん
紫の壜
豊島 与志雄
Lisez 紫の壜 (むらさきのびん) de 豊島 与志雄 (とよしまよしお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 11 802 caractères · 24 écrans
――そうだ、貧乏な者には、結婚のことなど言い出せないのかも知れない。貧乏な私が、今、彼女へ結婚のことを言い出したのも、長い躊躇の後だ。それならば、恋愛は……。貧乏な庶民には、結婚をよそにした恋愛など、猶更無理なことかも知れない。私にしても、恋愛よりは結婚のことばかり考えていたのだ。
なにかしんしんとした思いに沈んでいると、彼女は私の肩をとんと突いた。
「面白くしましょうよ。生きてる間は……。」
それでも、彼女の顔はどこか硬ばってるようだった。
「空襲の頃の方が面白かったわ。」
彼女は立ち上って、小箪笥の上方の小さな抽出の奥を探り、紫色の壜を取り出してきた。
「これ、なんだか分って?」
私は壜を受け取り、栓を開けようとした。
「開けちゃだめ。」
彼女は壜を取り戻して、その毒薬の名を囁いた。
「いざという時のために、わたし、富永さんのお年寄りからわけて貰ったの。こんなものを持ってると、生きてるのに張り合いがあった。けれど、もうこんなもの、つまらなくなったわ。」
その壜を無雑作に、文机の隅に彼女は置いた。そして私たちはウイスキーを飲んだ。
「北海道へはいつ発つの。