Classiques japonais avec furigana
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さいきこうい
細木香以
Lisez 細木香以 (さいきこうい) de Mori Ōgai (森 鴎外) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 22 332 caractères · 45 écrans
世尊院は今旧境内の過半を失って、西の隅に片寄っている。
父はわたくしを誘って崖の上へ見せに往った。わたくしはこの崖をもこの小家をも兼て知っていたが、まだ父程に心を留めては見なかったのである。眺望は好い。家は市隠の居処とも謂うべき家である。そして窓の竹格子の裡には綺麗な比丘尼がいた。比丘尼はもう五十を越していたであろう。もし媼をも美人と称することが出来るなら、この比丘尼は美人であったと云いたい。
父はわたくしの同意を得てから、この家を買おうとして、家の持主の誰なるかを問うことにした。団子坂の下に当時千樹園と云う植木屋があった。父は千樹園の主人を識っていたので、比丘尼の家の事を問うた。
千樹園はこう云った。崖の上の小家は今住んでいる媼の所有である。媼は高木ぎんと云って、小倉と云うものの身寄である。小倉は本質屋で、隠居してから香以散人の取巻をしていたが、あの家で世を去った。媼は多分あの家を売ることを惜まぬであろうと云った。
四
千樹園が世話をして、崖の上の小家を買う相談は、意外に容易く纏まった。高木ぎんの地所は本やや広い角地面であったのを、角だけ先ず売ったので、跡は崖に面した小家のある方から、団子坂上の街に面した方へ鉤形に残っている。